1 音響性能について

音の基礎知識
(1)床衝撃音の基礎知識

人の歩行や飛び跳ね、物の落下などによって床に衝撃が加わると、その振動によって大きな衝撃音が発生し、下階に影響を与えます。このような騒音は、床衝撃音と呼ばれており、集合住宅などの建物で大きな問題となります。
また、床衝撃音には、子どもの飛び跳ねや走り回り音である重量床衝撃音と、スリッパでの歩行、物の落下や家具の移動音である軽量床衝撃音に対する性能に分けられます。

空気音    人の声や楽器の音のように空間に伝わる音を空気音といいます。
固体音    階上の子どもの飛び跳ねる音や扉の開閉音、トイレの配水管など、壁や床を振動させ伝わってくる音を固体音といいます。
軽量床衝撃音 スプーンやペンなどの小物を落とした時の音で、床の仕上材などの違いで大きく異なります。
重量床衝撃音 子どもが飛んだり跳ねたりする時の音で、床スラブの厚さなどに影響されます。

(2)音の伝わり方

(3)床衝撃音遮断性能(遮音性能)の表記方法[「推定L等級」と新しい低減性能等級「ΔL等級」について]

これまでカタログでは、標準的な実建物での遮音性能を推定した「推定L等級」による表示が広く用いられてきました。しかし、建物の構造条件等が変化していく中で、空間性能を示す「推定L等級」は不具合が生じていました。
不具合を解消するため乾式遮音二重床の遮音性能は、部材性能としての低減性能である「ΔL等級」表記に移行しています。

ΔL等級推定L等級
表示形式部材単位性能を表す方法空間性能に結び付けた方法
表示する等級ΔLL等級、ΔLH等級
(例:ΔLL(Ⅱ)-2、ΔLH(Ⅱ)-2)
推定L等級
(例:LL45 、LH50 )
使用する試験室壁式構造実験室
(ただし、防音フローリング等は残響室でも可能)
主に残響室
床の評価対象部位一般壁際納まりまで再現施工室中央の一般断面部のみ
試験体の仕様一定水準で施工条件を標準化
→相互比較が容易である
(条件外の結果はSを付す)
試験体の施工条件がさまざま
→相互比較が難しい
試験機関の相違点統一した評価方法を採用推定方法に差があった
※出典:(一財)日本建築総合試験所 説明会資料(2008年5月)より転載(許諾済)

従来カタログ掲載の推定L等級について
この値は、公的試験期間の実験室において、壁と拘束(きわ根太など)を設けず、幅木などを再現しない状態で試験を行い、RC150mm、梁区画面積約10~15㎡のコンクリート床版と組み合わせた特定条件における推定値です。
また、この推定値は保証値ではありませんので、ご注意願います。

(4)新しい低減性能等級「ΔL等級」

床材の床衝撃音低減性能の表現方法に関する検討委員会「床材の床衝撃音低減性能の等級表記指針」によります。

■床材の床衝撃音低減性能の等級
■軽量床衝撃音レベル低減の下限
表記する等級軽量床衝撃音レベル低減量の下限値
125Hz
帯域
250Hz
帯域
500Hz
帯域
1kHz
帯域
2kHz
帯域
ΔLL(Ⅱ)-515dB24dB30dB34dB36dB
ΔLL(Ⅱ)-410dB19dB 25dB29dB31dB
ΔLL(Ⅱ)-35dB14dB20dB24dB26dB
ΔLL(Ⅱ)-20dB9dB15dB19dB21dB
ΔLL(Ⅱ)-1-5dB4dB10dB14dB16dB
■重量床衝撃音レベル低減量の下限値
表記する等級重量床衝撃音レベル低減量の下限値
63Hz
帯域
125Hz
帯域
250Hz
帯域
500Hz
帯域
ΔLH(Ⅱ)-45dB-5dB-8dB-8dB
ΔLH(Ⅱ)-30dB-5dB-8dB-8dB
ΔLH(Ⅱ)-2-5dB-10dB-10dB-10dB
ΔLH(Ⅱ)-1-10dB-10dB-10dB-10dB
©リオン株式会社
©リオン株式会社

2 二重床の耐荷重性能について

(1)床のたわみについて

乾式遮音二重床は、遮音性を高めるためにクッションゴムを使用しています。そのため、歩行時に床が若干たわんだり、家具などの重量により床が少し沈む場合があります。
(ただし、床の沈みは重量物を除去すれば、ほぼ元通りに復元いたします。)

乾式遮音二重床には、疲れにくい適度な歩行感、転倒衝突時の安全性などの特徴を備えているため、構造上多少のやわらかさ感や振動伝搬が発生することがありますが、異常ではありません。
また、家具などにより床が若干たわむことがありますが、構造上問題はありません。

(2)床下地材の性能試験方法

規制される基準はありませんが、UR都市機構や(一財)ベターリビングでは独自の基準を設けています。

※出典:UR都市機構 機材の品質判定基準(平成20年5月版)建築編より抜粋

(3)耐荷重性能

積載耐荷重は、建築基準法で定められた1㎡あたり180㎏の基準を大きく上回る値で設計され、安全性を十分確保していますが、局部的な床の沈みが大きくならないよう、ピアノや冷蔵庫などの重量物を置く場合には、脚部の床上に台座や板材を置くなどして重量を分散させるようにしてください。現場での条件や必要に応じて補強用支持脚の使用をお奨めします。

重いものを置くときの補強方法(対策事例)

ピアノ、本棚、家具、冷蔵庫などの重量物を置くときは支持脚の設置間隔を狭くしたり、捨張り材を増張りする等の補強処置を行うことをお奨めします。また、床面を保護するために、インシュレーター(緩衝材)や板材を置いて荷重を分散させてください。
床下地の遮音性を高めるためのクッションゴムを使用していますので、一定の変形が生じます。歩行による家具の揺れや重量物を置いた場合の沈みが発生する場合がありますが、異常ではありません。

重量物の荷重について

集合住宅において、設置されることが考えらえる重量物の例を示します。

名称荷重寸法重量(㎏) 備 考
グランドピアノ局部3点350フローリング表面の傷・へこみ防止、および沈み量低減のため、各ピアノメーカーのゴム性のインシュレーターおよび厚さ12mm以上の合板(300角以上)の設置をお願いします。
アップライトピアノ局部4点250
水槽300mm×600mm100水槽は、仕様により支持方法が異なりますが、床表面の保護も含め、その下には、厚さ12mm以上の合板を設置いただき、面荷重としてください。
本棚300mm×600mm200本棚は、仕様により支持方法が異なりますが、床表面の保護も含め、その下には、厚さ12mm以上の合板を設置いただき、面荷重としてください。
ウォーターベッド1200mm×1950mm900支持方法によっては設置できない場合がありますので、二重床メーカーにお問い合わせください。

(4)耐震性について

規制される耐震性の基準はありません。
家具などが転倒しないように通常の地震対策や転倒対策等を行ってください。

前傾になりやすい食器棚などを直立させるとともに、歩行による揺れを防止する効果があります。

タンスや本棚と天井間を支える部材を使用することで、転倒を防止する効果があります。

3 居住・安全性能について

(1)適度な歩行感

歩く動作をしっかりフォロー。床の弾性により、歩行時に床側から足元を押し上げてくれるような作用があります。

(2)転倒衝撃時の床のかたさ

万が一の転倒にも優しさを発揮。転倒衝突時の床のかたさとは、人が何らかの原因により床に転倒衝突した時の、衝突による障害発生の観点からみた床のかたさのことを指し、入居者の安全性を左右する性能項目です。転倒衝突時のかたさが適切であることが要求される床の種類としては、入居者・利用者の転倒衝突の頻度が相対的に高いと考えられる諸施設の床が挙げられ、高齢者用施設の床などはその代表例であるといえます。

家庭内における主な不慮の事故(令和5年調べ)
(3)疲れにくさ

「立つ」ことの負担を軽減。床に適度な弾性があることで、足への負担を少なくします。

(4)バリアフリー

バリアフリー設計で、つまづきにくく、車椅子でも安心できます。

(5)暖かい床面

直接コンクリート床に触れず、木の暖かなぬくもりが伝わります